冒頭の画像はAIで制作した学習イメージです。
「授業では解けるのに、テストでは解けない」「解説を読めば分かるのに、自分だけでは最初の一手が出ない」。高校数学で、こんな経験はありませんか。
今回は、白修学院 統括塾長・白石久祈が大切にしている、基礎を徹底して身につけるという指導の考え方を、三角比の問題で説明します。基礎の徹底には、公式を覚えるだけでなく、どの三角形に着目し、どの条件で公式を使うかを自分で選ぶ練習も含まれます。
公式を覚えているのに、応用問題で止まるのはなぜ?
正弦定理や余弦定理を覚えていて、一つの三角形の辺や角を求める問題は解ける。それでも、四角形に対角線が引かれた図になると、手が止まることがあります。
この場合、見直したいのは「どの三角形で、何を先に求めるか」です。授業では先生が三角形を示し、使う公式まで説明してくれるため、その後の計算を進められることがあります。テストでは、その選択から自分で行う必要があります。
応用問題の中にある基本的な問題を取り出し、順番につなげられるか。次の例で確かめてみましょう。
三角比の例題:四角形のどの三角形に着目する?
問題
図のような四角形ABCDで、
AB=3、BC=5、∠ABC=120°、
AD=5、CD=8とする。
∠ADCを求めなさい。

まず、計算せずに考えてみてください。求めたい∠ADCがあるのは△ADCですが、今分かっているのはADとCDの長さです。あと何が分かれば、角を求められるでしょうか。
ヒント:最初に求めるものを見る
対角線ACの長さが分かれば、△ADCの3辺がそろい、余弦定理で∠ADCを求められます。ACは△ABCの辺でもあります。△ABCには「2辺とその間の角」がそろっています。
解答:三角形を選ぶ順番と計算を見る
① △ABCで、対角線ACを求める
AB、BCと、その間の∠ABCが分かるので、余弦定理を使います。
AC2=32+52−2×3×5×cos 120°
=9+25+15
=49
よって、AC=7。
② △ADCで、∠ADCを求める
AD=5、CD=8、AC=7と、3辺がそろいました。もう一度、余弦定理を使います。求めたい∠ADCの向かい側の辺はACです。
72=52+82−2×5×8×cos ∠ADC
80×cos ∠ADC=25+64−49=40
cos ∠ADC=1/2
0°<∠ADC<180°より、
∠ADC=60°。
解く順番は、△ABC → 共通の辺AC → △ADCです。一つひとつは余弦定理の基本的な使い方ですが、二つの三角形をつなぐ判断が必要です。
「基礎の徹底」で練習したい3つのこと
1. 使う三角形と、その理由を先に書く
いきなり公式を書かず、「△ABCには2辺とその間の角がある」「△ADCで角を求めるには、まずACが必要」と言葉にしてみます。図が複雑なら、着目した三角形だけを別に描き、分かっている辺と角を書き込みます。
公式を使う条件も一緒に確認しましょう。例えば、2辺とその間の角から残りの辺を求める場合や、3辺から角を求める場合は余弦定理が使えます。向かい合う辺と角の組が分かる場合は正弦定理を使えるか考えます。正弦定理で角を求める際は、鋭角・鈍角のどちらが条件に合うかにも注意が必要です。
2. 解答を閉じ、三角形を選ぶところから解き直す
計算だけをもう一度写すのではなく、白紙から取り組みます。今回なら「なぜ△ADCからすぐに計算できないのか」「なぜ先にACを求めるのか」まで説明できるかを確認してください。
途中で止まったら、その場所が次に練習する部分です。公式が出てこないなら公式と条件へ、三角形を選べないなら図の見方へ、計算で間違えるなら該当する計算へ戻ります。
3. 日を空け、似た問題でも自分で選べるか確かめる
同じ問題を覚えた直後だけでなく、次の復習日にも解いてみましょう。その後は、数字や図の向きが異なる問題、使う公式が見出しに書かれていない問題などで、着目する三角形と解く順番を選べるか確かめます。
「公式を言える」「解説を読める」に加えて、「条件を見て、自分で使える」まで練習する。白修学院が重視する基礎の徹底は、この段階まで確かめることです。
解答例と自力で解く練習を組み合わせること、時間を空けて復習すること、理由を説明する問いを使うことは、米国教育省の研究機関IESの学習指導ガイドでも取り上げられています。参考:Organizing Instruction and Study to Improve Student Learning(2007年・英語)
三角比以外でも、最初に止まった場所を見つけよう
テストで解けない理由は、生徒さんや問題によって異なります。今回のような方針選びのほか、用語の理解、式変形、計算ミスなども確認します。
- 何を求めるか分からない:与えられた条件と、求めるものに印をつける。曖昧な用語は教科書の定義へ戻る。
- 途中の式変形が分からない:前の行から何を計算したかを書き足す。
- 方針は合っているのに答えが違う:最初に間違えた行を見つけ、「次は何を確認するか」を一つ決める。
別の例:平方完成でも「なぜ?」を確かめる
x2−4x+5=(x2−4x+4)−4+5=(x−2)2+1。「なぜ4を足し、その後で4を引くのか」を説明してみましょう。(x−2)2の形をつくるために4を加え、元の式と同じ値にするために4を引いています。
次は解説を隠してx2−6x+11を平方完成してみてください。答えは(x−3)2+2です。展開して元の式に戻ることも確認しましょう。
課題が多いときは、分からなかった1問を選ぶところから始めてください。今日解き直し、次の復習日にもう一度、週末などに似た問題を1問。これは予定の一例です。理解の状態や学校の課題、テストまでの期間に合わせて調整しましょう。
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